Shibaのブログ

日々の読書や芸術鑑賞、旅行などの体験を記録するとともに、その中で感じたこと、考えたことを記述します。

短歌十首・皐月水無月

 

 1、高崎、白衣観音の御足下にて。三首

 

山の屋に鳴る一輪の風車

心吸はれし

その一輪に

 

名も知らぬ高山草の背の高き

花の小さき

そを眺め居る

 

観音の御足のもとの店座敷

山風に鳴る

初夏の風鈴

 

 

2、倦怠の実家の昼。三首

 

隣家の犬も寝さしむ蒸し暑さ

皐月の終り

夏のはじまり

 

われ生まれし時に植へたる花水木

今年も咲けりと

祖母の言ふとき

 

いづくより渡り来たりし

つばくらめ

ふるさとの風を忘れざらむか

 

 

3、心病む朝。三首

 

われ一人この世に要らぬごとく見え

床より出でぬ

心病む朝

 

雉鳩のほつほつと鳴く声聴きて

雨を思へり

ふるさとの雨

 

尋常のことすらできず

われは泣く心を持ちて

今日も過ごしぬ

 

 

4、夜明け前。一首

 

鳥たちの唄も聴こえぬ

朝まだき夜街のしじま

胸のざわめき