Shibaのブログ

日々の読書や芸術鑑賞、旅行などの体験を記録するとともに、その中で感じたこと、考えたことを記述します。

書評

歴史は運動であり、固定化されたパターンではない。――宇佐美圭司『廃墟巡礼』(平凡社新書):書評【日日書感No.4】

西欧近代がアジア諸国を飲み込み、グローバルなシステムの中に組み込んだ後、つまり、アジアが近代化という波にのまれた後、著者はその「大洪水のあと」のアジア・アフリカへと旅に出た。そして彼の旅とは、「つるつる」の表面ではない、その奥底に潜む「ざ…

事実が価値を持たなくなる時代とは――津田大介・日比嘉高『「ポスト真実」の時代』(祥伝社):書評【日日書感No.3】

近年世界中で見られる、事実の軽視と虚偽の蔓延、社会の至る所で広がる分断、それらは私たちの時代が抱えている危機である。そのような事態は、「ポスト真実(post-truth)」と呼ばれる。根拠のないデマやヘイト、フェイクニュースなどが大規模に拡散され、…

「何になりたいのか?」ではなく、「何を望みたいのか?」――ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史』(河出書房新社):書評【日日書感No.2】  

『サピエンス全史 上』頭を抱えるサピエンス男性は、我々が犯した罪の重さを表すのか、はたまた、我々の未来への不安を示すのか……。 本書は、世界中で1000万部を超えるベストセラーとなり、一世を風靡した本である。流行した理由としては、恐らく内容が…

日本文学の価値づけは、未来の文学の歩みに懸っている――奥野健男『日本文学史』(中公新書):書評【日日書感No.1】

奥野健男著『日本文学史』中公新書212 本書は、日本近代文学を、明治初期の江戸時代の影響が濃い戯作文学から、戦後高度経済成長期の石原慎太郎や大江健三郎まで時代順に解説し、俯瞰的にまとめたものである。作家作品の背景にある文芸思潮の解説に特色が見…