曲雨
雨も曲がってゆくのだ
この小さく歪な街では
目の前に尾を引く光がゆらめく
酒と薬で幻覚もどきを
見ていてはまた外へ目をやり
思う
歪んでしまったのは
僕なのか
世界の方なのか
人間も終わってゆくのだ
この小さく冷たい街では
通りには機械のように泥人形のように
同じ格好をした者たちが
進んでは感情を欠落しやがて
死ぬ
その時まで何を思い
何を感じ
生きていくのだろうか
生命はもはや無いのだ
この閉じた断絶の街では
世界は既に無機質に支配されて
誰もが幻覚をたよりに生きている
人間が人間でなくなり
もう
後戻りはできない
無になり
ただ無になってゆく
唯汚れた水の窪に流れ行く如く
人間の深淵へと落ち之く夕暮れ